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気づいたらひまわりは西を指し、アルプスの白い頂上もオレンジに輝いている。
同じ白いヴィアンナを見たとき、俺は一瞬ぞわぞわとしたものが胸の中を駆け巡ったことに気づいた。
俺は、離れたくないのか?
このひまわり畑から。
ヴィアンナのいる町から。
「どうかな。どうせだったらヴィアンナを連れてイタリアに逃げるって手もある」それこそ柄にもないことを言ってみた。
言った後で、これじゃヴィアンナが恋人で、駆け落ちじゃないかとドキリとした。
なにより、それに俺が違和感を感じていないことに。
「それこそありえないわ。あなたは領主跡取りでしょ?」思ったよりヴィアンナはあっさりかえした。
「でも、ありがとう。そういってくれて」ヴィアンナは西日の中で眠るように微笑んだ。
「そう、って?」
「あなたが言ったんじゃない」
「え?」
一陣の風がひまわりの間を駆け抜ける。
ひまわりに隠れるように、俺より頭一つ低いヴィアンナは軽く背伸びをして。
俺にキスをした。
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