一杯のコーヒー

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明日も笑って、明後日も笑って、幸福な自分を演じ続ける、周りの人達も演じ続ける。 そうやって傍から見れば世界平和。 だが演じている我らが演劇の舞台上だとして、この演劇に観客席は存在しているのだろうか。 私達は誰を相手に演じているのだろうか。 虚無。 やはり生き続けていることの意味は分からないし人間らしく振る舞う意義も分からないよ。 このまま何処まで繋いで行けるのだろうか。 私達は恵まれすぎた。 生きるのに精一杯なくらいの苦しい世界で生まれれば悩む余裕なんてなかったのに。 コーヒーを飲む余裕すらなければカフェインを摂取して無駄に思考を広げることもなかったのに。 無ければ無ければという虚無を望む私。 私は存在しているから虚無ではない。 持っていないものは欲しくなるの。 だから本当は虚無が欲しくて欲しくてたまらなかった。 そう結論付けて残りのコーヒーを飲み干した。
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