アクション

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 翌日。  わたしは文芸部の子に、それとなく近付いて話してみた。最近話題になっている本の話題から、文芸部の活動。  そして、阿藤麻真美のこと。  案の定、麻真美の話題になった途端、文芸部の子は顔を曇らせた。 「部誌の挿絵をやりたがったんだけど、美術部の子達の作品を丸写ししただけの絵を提出してきたの。美術部とうちの部長は仲が良いから、すぐにバレちゃってね。阿藤さん、たまたま見て無意識に影響されたのかも、て泣いて謝るから、一応は許したんだけど……」  大きなため息をついて、文芸部の子は別の罪状も教えてくれた。 「こっそり、香水をつけてきた子がいたのね。外国産の超高級ブランドで、すごくいい匂いだった。そしたら次の日、阿藤さんってばすっごいきつい臭いを漂わせてきたの。芳香剤をそのまま制服にぶちまけたとしか思えないのに、『海外ブランドの限定品だよ』てどや顔で」 「一応、小説とかも書いているんだけど……有名作品の設定とか、流行ったセリフをそのまま繋ぎ合わせているだけって感じ。それか、ベストセラーの登場人物の性別を入れ替えて、口調を変えただけとかね」 「そのくせ、人が書いた作品はあまり熱心には読まなくって……ううん。変に上から目線で批判されるほうが嫌かな」 「退部、してほしいけど……今のところ、本人にその気がない場合は、こっちから辞めさせることってできないんだよね。困ることしかしないけど、決定的な大問題でもないし」 はあー。  聞き終えたわたしと、話し終えた彼女は同時にため息をついた。  阿藤麻真美は、わたしの中学からの同級生だ。どんな人間か一言で説明するなら『何でも欲しがる嫌われっ子』だ。  でも、あいつの性格が変わっていないのは、わたしにとってはラッキーだ。
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