アクション

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 麻真美の家は掃除が行き届いていた。廊下を歩いていると、奥のほうから、麻真美ママの声が聞こえた。誰かと話しているみたいだ。 「ええ、それでお願いします……はい、大丈夫です」  麻真美にも聞こえたようで、鼻の穴を膨らませて自慢してくれた。 「母さんね、今度本出すんだって」 「すごいね!」  きっと料理本だろうな。中学の頃、来たくもない麻真美のバースデーパーティーで振る舞われた麻真美ママのお料理は絶品だった。味も見た目も完璧で、わたし達はプロの料理人だと思ったほど。  キッチンに着いたわたしは、手土産を差し出した。  少し遠いところにある、洋菓子店のケーキ。味は美味しいし、十二星座をイメージした見た目が個性的でかわいい事で有名だ。麻真美の星座と店で一番人気のおとめ座のケーキを持っていった。  ちなみに、わたしの星座はない。 「うっわあ! かぁわいーい!」  キッチンで箱を開いた麻真美は、思った通りの歓声を上げた。ところが、ポケットから取り出したのは、予想に反してガラケーだった。 「スマホじゃないんだ?」 「なに、悪い?」  ムッとした顔をされた。まずい。 「ちょっと意外だっただけ。麻真美ちゃんって、最新のものはなんでも使いこなしそうだから。パソコンでブログもやってそうだし」 「ブログ、やっているよ」  バカしたような笑みを浮かべ、麻真美はガラケーをケーキに向けた。 「ケータイでだって、ブログもネットも出来るんだから。パソコンでしかできないわけないじゃん」 「へえ、すごいね! ブログやっているんだ!」  せっかく褒めてあげたのに、麻真美はケーキのアングルに集中していて、こっちを見なかった。 「やっているよー。パソコンでやるより操作簡単だし、みんなオシャレだし」 「パソコンって、そんなに難しい?」 「細かい操作が多くってうざい」  思い切って、もう少し踏み込んでみる。 「ブログでも絵は描けるの?」 「んー」  麻真美はシャッターを切ると、ようやくわたしのほうを見た。
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