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トラップ
「なに?」
「えっと、ブログでも絵は描けるのかなって」
「ああ。できるよ。ドレウィングってところで描いて、ブログで宣伝するって人いるみたい。
……奈緒ちゃん、知らないんだぁ?」
バカにしたような顔しているけど、【dreWing】の読みは「ドロウィング」だから!
「そのケーキも、ブログに載せるの?」
「ん、まあね。……それよりさ! 新しく買ったコスメ見せたげる!」
不自然に話題を変え、麻真美は部屋へとわたしを引っ張った。
麻真美のメイクコレクション自慢へ、わたしはオーバーリアクション気味の相槌を打った後、申し訳なさそうに切り出した。
「ごめん、麻真美ちゃん。ちょっと飲み物もらっていいかな? 喉、乾いちゃった」
「……いいよ」
麻真美は、一瞬だけ嫌そうな顔をした。わたしも同じ顔で見つめ返してやりたかったけど、ぐっとこらえて、へらへら笑う。
「あ、お水とかでいいから!」
「わかった。ちょっと待ってて」
当然でしょ、と言わんばかりに麻真美の声は冷たかった。おいおい、確かにわたしが押し掛けたようなもんだけど、客に飲み物の一杯も出さないってどうなんだよ。
わたしの中にあった、わずかな良心が吹き飛んだ。
もう、いいや。
こいつ相手なら、何やったって。最低な奴に最低な仕返ししても、何も悪くない。
わたしは鞄からスマホを取り出す。カメラ機能を「ON」にした。麻真美のガラケーが置かれたテーブルと、教科書とマンガが積まれた勉強机。
イラストの投稿なんか絶対できないって、一目でわかる部屋。
カシャッとシャッター音が鳴ったところで、足音が聞こえた。
慌てて元の場所に座り、スマホを鞄にしまったところで、麻真美がドアを開けた。
「母さんが、スムージー作ってくれるって」
「え!? すごい!」
こんな埃っぽいところじゃなければ、もっと素敵なんだけどね!
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