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「奈緒、夕飯できたよ」
「あ、はい。今行く!」
ドアの向こうのママの声に答えて、わたしは慌ててパソコンをシャットダウンさせる。
部屋を出ると、ママはちょっと困った顔をしていた。
「パソコンもいいけど、宿題は忘れないでね」
「はぁい」
やんわりとお説教をされたけど、笑顔で返事をした。
ここで変に反抗したら、ネットを使う時間が制限されてしまう。ネットは、わたしにとって結構大事な場所だ。描いたイラストを発表して褒めてもらえるし、他人の素晴らしいイラストを絶賛できるし、次の作品への参考になる。
それを取り上げられないために、わたしはママとパパの言うことをよく聞くし、勉強だってキチンとする。そうした努力を惜しまないくらいには、わたしはネットの交流が気に入っていた。
「パソコンって、そんなに楽しい?」
「楽しいよー。ママだって、手芸教室の人と会うの好きじゃん? それと一緒」
「直接顔を見ないのに、大丈夫?」
「それはお互い様だよ。わたしも見えないし、向こうも見えない。見えるのは、イラストだけだから」
ネットでは、わたしは「女子高生・浜中奈緒」ではない。「鉛筆でイラストを描く7nao」だ。わたしも、他の人をそうやって見ている。イラストと、好きなものだけ。さっきのIsuno3さんについても、同い年か、ママより年上かどうかも分からない。もしかしたら、男の人かも。
でも、別にどうでもいい。
わたしはただ、気の合う人と交流したいだけだから。
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