その時――そのルームでは…

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「そんなこと知らないわよ……」  先輩は、苦笑しながら言った。    ある水曜日の午後……  いつものように温子は、下校してからGカラオケルームでアルバイトをしていた。  いつの間にか、雨が降りだしていた。  雨のせいか客足はイマイチで、午後七時半には利用客ゼロの「全空き」になった。  店長の指示で、温子と従業員の好子(よしこ)は全室のチェックをしていった。  温子は、6番から10番を担当し、すべてクリヤーだった。  店長の好意で、近くのスナックへ飲みにいくことになった。  が、温子としては余り気がすすまなかった。家族のことや学校のことを訊かれるのが、好きではなかったからだ。彼女は困りながら帰り支度をした。
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