アザミ

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「おはようございます。お疲れさまです」 元気よくそう言ったのはアルバイトで、看護学生の長田留実(ながた るみ)ちゃんだ。 彼女は私よりも二つ下で、今どきの子というよりは真面目な印象を与える女性で、ちょっとふっくらしてるものの、可愛らしく彼女はいつもにこやかに笑っている。 彼女の柔らかい雰囲気はこの花屋を毎回明るくするよう。 彼女は学校の都合を一番に考えシフトを組んであるため、来れる時間はばらばらだ。 店長は作業する手を止め、「お疲れさま」と言った。 「お疲れさま留実ちゃん」 私も続けて彼女に挨拶をすると、留実ちゃんは私にも微笑んだ。 それから彼女は「すごい量ですね」と、段ボール箱を見て、目を瞬かせる。 「うん。明日、明後日は注文が多いからね。すごいでしょ」 広くないフロアの奥に段ボール箱が高く積み上げられているからだ。 すると店長はずっと真剣だった表情を和らげた。留実ちゃんの空気に店長は癒されたような顔をしている。 ほんの少し胸がざわついたけれど、気にしないと暗示をかける。 好きな人とずっと近くにいると、心が焦りでうごめく。 それに、店長はお客にも人気がある。 店に来るの女性客が多く、大人な綺麗な人が、彼に熱っぽい視線を向けることもしばしば。 私はそれを気にしないよう心がけている。 「胡桃ちゃん、そこまでしたら留実ちゃんと代わってお昼食べていいよ」 「はい……」 留実ちゃんが今ごろに出勤するときは、彼女に引き継ぎ私は休憩をとることが多い。 私は彼女に引き続き、店の奥の休憩室へと足を進めた。 私の想いは店長に届く日がくるのだろうか……
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