326人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはようございます。お疲れさまです」
元気よくそう言ったのはアルバイトで、看護学生の長田留実(ながた るみ)ちゃんだ。
彼女は私よりも二つ下で、今どきの子というよりは真面目な印象を与える女性で、ちょっとふっくらしてるものの、可愛らしく彼女はいつもにこやかに笑っている。
彼女の柔らかい雰囲気はこの花屋を毎回明るくするよう。
彼女は学校の都合を一番に考えシフトを組んであるため、来れる時間はばらばらだ。
店長は作業する手を止め、「お疲れさま」と言った。
「お疲れさま留実ちゃん」
私も続けて彼女に挨拶をすると、留実ちゃんは私にも微笑んだ。
それから彼女は「すごい量ですね」と、段ボール箱を見て、目を瞬かせる。
「うん。明日、明後日は注文が多いからね。すごいでしょ」
広くないフロアの奥に段ボール箱が高く積み上げられているからだ。
すると店長はずっと真剣だった表情を和らげた。留実ちゃんの空気に店長は癒されたような顔をしている。
ほんの少し胸がざわついたけれど、気にしないと暗示をかける。
好きな人とずっと近くにいると、心が焦りでうごめく。
それに、店長はお客にも人気がある。
店に来るの女性客が多く、大人な綺麗な人が、彼に熱っぽい視線を向けることもしばしば。
私はそれを気にしないよう心がけている。
「胡桃ちゃん、そこまでしたら留実ちゃんと代わってお昼食べていいよ」
「はい……」
留実ちゃんが今ごろに出勤するときは、彼女に引き継ぎ私は休憩をとることが多い。
私は彼女に引き続き、店の奥の休憩室へと足を進めた。
私の想いは店長に届く日がくるのだろうか……
最初のコメントを投稿しよう!