アザミ

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治人さんはちょうど私と入れ違いに店に出たため、私は昼食を一人で食べることになった。 だいたいいつも一人だ。 店の奥には簡単な壁でしきられた休憩スペースがある。個々の荷物を置くだけのロッカーに、小さなテーブルと椅子、それから冷蔵庫と電子レンジがある。 私は電子レンジで持参した弁当を温め終えたとき、休憩室に珍しく店長が中に入ってきた。 「胡桃ちゃん、ごめん僕も一緒に食べるね」 「あ、はい……!」 まさか彼とお昼を共にできるなんて思わないから心臓が激しく動き始める。 温め終えた際、弁当を取り出す手が震えるほど。 「もしかして注文が入ったんですか?」 「うん、17時に花束30個入ったんだ」 「急ですね」 「ほんと、間に合わせないと」 彼はそう言うと、すぐ側にあるコンビニの袋から弁当を取り出した。 「胡桃ちゃんは弁当を作ってきたの?」 「はい……」 私は蓋を開けるのが恥ずかしくなる。 中にはふりかけごはんと卵焼きとウインナーしか入ってないため、貧相だ。 「えらいね」 「いえ、たいしたもの入ってないですから」 しかし、隠しておくわけにもいかないので、私はテーブルに置き開けにくくもそれを開けた。 「美味しそう、卵焼き」 「え、そんな……」 料理は少しも得意ではない。 卵焼きは砂糖の入れすぎて焦げ気味であるため、お世辞にも美味しそうにみえない。 きっと気を遣われたに違いない。    「店長はコンビニのお弁当ばかりですよね」 「まぁね」 私は話を変えたが、内心落ち込んでいた。 せっかく彼と向かい合って昼食を囲めるのに、ついていない。 複雑な思いで私は卵焼きを口に入れる。 それはほんのり焦げが苦くて、まるで私の気持ちのようだった。
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