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店長は後から来たが、食べ終えたのは私とほぼ同時だった。
注文のことで頭がいっぱいなだけに早くとりかかりたいのだと思う。私はもらったチョコレートを大切に鞄に仕舞い、店長と店に出た。
店は治人さんと留実ちゃんは接客中で、予約分には全く手を回せてない状況だった。
外にも店の前に並ぶ花鉢を手に取り悩んでいる様子のお客様の姿が見える。
時間があるときは、声をかけるが、今の優先順位は花束だ。
店長は真剣な顔で私に「胡桃ちゃん、お客様は二人に任せるからこっちを専念して」と言った。
「はい」
「僕が花材を出すから作っていってくれる?」
「はい、わかりました」
彼はとても真剣な表情で花を素早く取り出し始める。その顔に胸が騒がしくなるも、集中しなければと気持ちを正す。
そこに「店長、すみません……」と、留実ちゃんが店長が呼ぶため、彼は手を止めた。
慣れない彼女はよく彼に助けを求める。
私もそうだったはずなのに、今ではそんなことはあまりなくなった。
それは成長したことを示し、嬉しいことであるのに、近い距離で話す二人を見ると寂しくなる。
きっとさっきのチョコも留実ちゃんがいたのなら、彼女に渡していたに違いない。
それでも店長が私の横に来て、共に花束を作り始めると沈んでいた気持ちはなくなるから不思議だ。
ただ店長の花束作りはとても早く私の2倍速のため、焦る。
「胡桃ちゃんまだ時間あるからゆっくりでいいよ」
「はい……」
そのため自然と慌ててしまい、雑になっているのを見抜かれてしまっていた。私は密かに落ち込んでしまう。
彼にはまだまだ届きそうにない。
私は下唇を噛んで、小さく息を吐き作業を続けた。
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