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「胡桃ちゃん、それまでしたらループリボン作ってくれる?できるだけ色違いになるように」
「わかりました」
結局、店長の半分くらいしか作れなかったけれど、これも経験値の違いだ。
私は指示通りリボンを作り始める。
ループリボンは普通のリボン結びとは違い、ループを左右対象になるよう重ねて作っていくのだか、大きく作るほど難しい。
ループの大きさは花束の大きさと比例するように大きく作る。
私はループリボンを作れるようになるまで、かなり時間がかかった。
それは元々私が不器用なためだが、店長は時間がかかったにも関わらず、できるようになるまでとても親切だった。
教えてくれたときの店長との近い距離に、ドキドキしたのは今でも簡単に思い出せる。
どうして好きな人のことになると、まるでメモ紙をめくるように、簡単に記憶から取り出せるのだろう。
17時まで時間はまだある。しかし、できあがるまで気が落ち着かないため、私と店長は慌ただしく花束をラッピングしていく。
やはりラッピング作業の早さも店長には敵わないものの、私なりに頑張って仕上げていく。
そしてようやくできたとき店長が「できたね、頑張ったね胡桃ちゃん」と、言った。
「いえ、店長がほとんど……」
「僕だけじゃこんなに早く出来ないよ」
彼は私の頭を一撫でして、できた花束を一つずつ確認し始める。
こういうことをするのは私だけだといいのに……
店長が触れた頭が熱い。
「このお客様、元々別の花屋で注文してたらしいんだけど、今日の昼間に取りに行ったら来週だと間違えられていたみたい」
「えぇ、大変じゃないですかそれ……」
「そうだよね、だからうちに時間を夕方にして頼み直しに来てくれたんだ」
「そうなんですね、怒ってたんじゃないですか?」
「そりゃもう……」
店長はお客様の様子を思い浮かべたのか苦笑した。
まだ日にちは間違えたことはないものの、同じミスをするのはありえない話ではない。
「うちに流れてきてくれたのはありがたいけど、僕たちも気を付けないといけないよね」
「はい」
小さな信用が重なって大きな仕事に繋がる。
彼がよく言う言葉だ。
それを言われるだろうか、と思ったが、私たちのもとへ留実ちゃんが駆け寄ってきた。
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