アザミ

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「店長、今作ってもいいですか?」 それでも、まだ店長ほど早く作れない私は、早めに取りかかりたい。 「いいよ、予約ももうないし。多めにキープ水入れてね」 「はい。ありがとうございます」 この店の周りは多くの会社が立ち並ぶので、夕方になるとお客様が増える。 そのため、できるだけ早めに作りキーパーに入れておくのが無難だ。 花束には持ちをよくするため、花束の切り口に切り花の持ちをよくする栄養剤のキープと呼ばれる液体を入れる。 早めに作る際は、それを普段より多めに入れるのだ。 「胡桃ちゃん、若い女性のようだからこれ使うかい?」 「えっ、あっ可愛い」 店長が私に見せたものは、ピンクと白の大きめなチェック柄のラッピングペーパーだった。 少しラメがかった光沢のあるラッピングペーパーは女性が好みそうなものだ。 初めて見るもののうえ、まだ未開封であるから、今しがた村野さんが卸したものに違いない。 「リボンもいくつか買ったよ。好きなの使っていいよ」 その他新たなリボンまで見せられて私のテンションが上がる。 「ありがとうございます」 「作ったら見せてね」 私は彼に元気よく「はい」と、答えて作業に取りかかった。 まずは花材を何にしようか、とキーパーの中を覗く。 おまかせと言われたらつい自分の好みに偏ってしまいがちだ。 しかしギフト用のため、一般的に好まれるピンクを意識して、自分の好きな黄色は少しだけ入れることにした。 私は黄色が特に好きなため、初めの頃は色選びにひどく苦戦した。 今では花材選びや、花束を作る際、スパイラル状に花を束ねるやり方も、コツを掴みだいぶ慣れてきたと思う。
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