アザミ

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私が花束を束ねていると、店長が横から「おっ、どれどれ……いいんじゃない?可愛くできてる」と、言って私の隣に立った。 店長は「あとで見せてね」と言いつつも、毎回気になるようで途中経過を見に来る。 今日もそう。 それは私に任せられないからなのかという不安もあるが、気にかけてくれているという嬉しさも伴うため、私の心は忙しい。 「ありがとうございます。これでラッピングしていいですか?」 「うーん、そうだな……」 彼は悩ましげに顎を手で触りながら首を傾げる。 花束を真っ直ぐ見てくるその瞳に胸の鼓動は跳ね上がるようだ。 「初めてのお客様だから、少しサービスしようか。 ギガンジュームとミニバラにそうだな、トルコももう少し入れていいよ」 「わかりました」 豪華だなと思いつつ、私はそれらを足すことにした。 店長はサービス精神が旺盛だ。それが常連客や新規客になると尚更そう。 そのため、他の花屋に比べて値段と花の量を比較するとこの店が断然に多くて安い。 儲けがどれくらいあるのか私は知らないが、ときに心配になるほどだ。 それでもお客に優しい彼が好きだったりするから、乙女心はよくわからない。 「どうです?」 私は彼の言った花を足し入れ、確認を頼んだ。 「いいね、ラッピングしていいよ」 「はい」 彼はまた私の頭を一撫でして、私から背を向けた。 こういうことされると期待してしまう。 特別なものなら、いいのに……と。
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