アザミ

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「なかなか今日はいいものを仕入れたんですね」 店長は私と治人さんが話している間、市場で競りおとしてきたものが記載された仕入れ伝票に目を通していた。 その、真剣な表情も好きで気を付けなければ目がハートになりそうだ。 「そうだろ。そろそろおろすか」 治人さんは得意気だ。 市場で競るのはとても大変な仕事だ。 私は何度か連れていってもらったことがあるが、流れていく商品を各席に備えられたボタンを押し、入札しなければならない。 そのスピードはとても早く、目線と思考が追い付かない。 私はただ治人さんを観察することしかできなかった。 治人さんと店長は花をおろす様子をみせたため、私も作業を中断し手伝おうと思い、腰に巻いた花鋏のケースに花鋏を仕舞う。 すると、店長が「胡桃ちゃん、それ仕上げてからでいいよ。僕と治人さんとでやっておくから」と言った。 「すみません、いいんですか?」 作業を途中で中断するのは避けたいことなので、とてもありがたい。 「うん、いいよ。綺麗に作ってね」 「はい」 私が頷くと、治人さんと店長は店の外に出ていった。 花をおろす作業はひと仕事で、結構な力が必要だ。 そのため申し訳ない気持ちもあったが、今回はありがたく甘えた。
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