アザミ

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店の中に一人になると、私はラッピングを再開させた。 切り口にキープ水を含ませた吸水紙に花用アルミで下部を包むと、ラッピングペーパーで全体を巻き仕上げに透明のセロハンで包んだ。 それから持ち手をリボンをつけるのだが、私は花束が豪華に見えるループリボンを結い、それをつけた。 それから誰も店に来ないうちに全てが終わると、私は作った花束を携帯のカメラで撮った。 私はアルバイトしていたときから自分の作品を撮りだめている。 「よし、上手く撮れた……」 きちんと保存できたことを確認すると、私は小さくため息を吐く。    これはまるで私の想いと同じだ。 日に日に店長を好きになる私の想いと一緒。 彼を好きになったのは、たぶんよくある一目惚れというやつだ。 面接で会ったのが初めましてだったが私は、彼の優しい穏やかな雰囲気に心を奪われた。 男の人にしては色白だが、身長も高いうえ、力もある。 私が重くて苦戦している鉢や水の入ったバケツを軽々と持つ彼に、毎日恋を重ねる。 携帯をエプロンのポケットに仕舞うと、店内に「あっちー、胡桃ちゃん終わったんだ。外出れそう?」と、言った治人さんの声が響く。 「はい、大丈夫です」 治人さんが汗だくで店に入ってくるのを見て、私は慌てた。 治人さんの手には花の入った段ボール箱がある。 仕入れた花は店にいれる前に品物と数のチェックを行うがそれは終わったよう。 「治人さんすごい汗ですね。水分摂らないと倒れちゃいますよ」 「ありがとう今日は暑いよ」 たしかに、三月の初めなのに気温が高い。 だが彼は極度の汗かきである。 私は花束をキーパーに仕舞うと、キーパーの隅に密かに冷やしていた水入りのペットボトルを治人さんに渡し、手伝うために外に出た。 外では店長が通行人の邪魔にならないように段ボール箱を積み上げていた。 「店長、運んでいいですか?」 「いいよ、ありがとう」 店長は爽やかな笑顔を向ける。 外の日差しと重なって、キラキラ光って見えた。 私は横長の段ボール箱を両手で持ち上げる。 「重いよ、平気?」 「大丈夫です」 一つ残念なことは、か弱い女性を演じられないことだ。 あまりに重いもの以外は、普通の女性よりは断然力があるため簡単に運べる。 「おっ、力があるね」 私は複雑な思いを抱えつつ「任せて下さい」と、言って笑った。
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