スイトピー

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私が喜ぶとみなみは嬉しそうに笑った。 「イヤリングって、なかなかないから嬉しい」 「そうだよね。ピアスばっかだよね」 「うん……」 ピアスはイヤリングと違い、可愛いデザインのものが多種類ある。 それには惹かれるが、痛いのは嫌いな私だ。 意気地無しなのは恋愛だけではない。 もしかすると、穴を開けられるくらいの勇気があれば、私は告白できているだろうか…… なんとなく自身の左耳を触り、ため息を一つ吐く。 「今日は店長からは何もなかった……?」 私がため息を吐いたせいだろう。彼女が私の顔を覗き込んだ。 「うん……」 「そっかぁ……」 毎回、よい報告ができずにいて申し訳ないと思う。 私に比べて彼女は華やかなので、きっとつまらないに違いない。 だって、私が片想いをしている期間に彼女は何度も彼氏を作っている。 「みなみは新しい仕事はどう?」 彼女の転職先のことはまだよく聞いたことがなかった。 そのため尋ねると、みなみは「今週からだから、まだ今は探りながらよ」と言った。 「そうなんだ……」 「うん、ただねぇ」 みなみは並びのいい歯を私に見せて、にんまりという感じに笑った。 「何?」 「同じ部署にものすっごくカッコいい人がいるんだ」 「へぇ……」 みなみはそういう話が好きだ。 「胡桃はほんと、そういうの全然興味ないよね……」「そうでもないよ」 「もう……。でも見たら胡桃でも驚くはず。もう、芸能人並みにイケメンだから」 「そうなんだ、みなみが言うならそうなのかもね」 彼女はイケメン好きだ。 歴代の彼氏は顔で選んだのか、と思うほど、顔のよい人ばかりだ。 みなみの判断基準は決してそうでないと言うが、私にはそうとしか思えない。 「ほんっとカッコいいの。好きになりそう」 彼女の目はハートになっている。 好きになりそうではなく、これはもう予想するに好きになっている顔だ。
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