209人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
彼女は昔から柔らかな空気を纏った可愛らしい容姿でいたが、学生のころより格段と綺麗になっていた。
仕事中であるのかフェミニン風なOLの装いでいる彼女と比べ、私はシャツにジーンズにエプロン姿というスタイルで少し恥ずかしい。
久しぶりに会う友人だけに、もっとよい格好で会いたかった、と思ってしまう。
「胡桃ちゃん、ここで働いてたんだね。たまに来るけど知らなかった、いつからいるの?」
「三年半前から働いてるよ。短大のときにバイトしはじめてそのままここに就職したの」
「すごい。そっか長いんだね、ベテランさんだ」
彼女はふんわりと柔らかく笑って、私を見つめた。
同性なのにドキドキするほど、彼女は綺麗だ。
「胡桃ちゃん、変わらないね」
「え、あぁ……」
そんな彼女に比べ私は変わらないのかと、ショックを受けたものの、暗い気持ちは隠して笑顔を装った。
「昔の綺麗なままだよ、すごい」
「え、なに言ってんの。蘭子ちゃんのほうがめちゃくちゃ綺麗じゃん」
だがまさかの褒め言葉に驚いた。それと同時に表情が緩む。
久しぶりに会った友人に褒められるのは、嬉しいものである。
ただひどく照れ臭い。
「えぇ、やだなぁもう。学年一美人だった胡桃ちゃんに言われても説得力ないよ」
「蘭子ちゃん褒めすぎだよ、そんな嘘は止めて……。そうだ、ミニブーケだったよね?」
褒められるのは嬉しいが、彼女は褒めすぎである。
恥ずかしいため、話を大きく変えた。
「うん、お願いします。全部ピンクにしてもらえる?お見舞い用なの」
「わかりました。匂いのきつくないものを選ぶね」
「ありがとう」
見舞い用は匂いのキツいものはNGだ。
私はそれを頭に入れつつキーパーを見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!