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みなみがイケメンと絶賛する男性と合コンをとりつけたと私にはしゃぎ気味で電話をしてきたのは、お願いと頼まれた日からから数日の火曜日の昼だった。
みなみはイケメンの男性の友人と仲良くなるのに成功し、合コンを強引にセッティングしたようで、私の暇なのをまず確認すると、「合コンに行くって約束したよね?」と、言って、私を逃がすことなく連れ出したのだ。
そもそもあまり乗り気でないうえ、突然のことに私はやや不機嫌でいた。
しかしみなみは上機嫌で、彼女との待ち合わせ場所に行くと、彼女は「ありがとうね。でもほんと、よかったよぉ、胡桃が予定なくて」と、言った。
「どうせ暇よ……」
そして心で「突然の合コンの数合わせに呼ばれるくらいに……」と付け加える。
「そういう意味じゃないの、胡桃が休みでよかったって言ってんの」
「あんまり変わんないよ」
「そうかな」
みなみが男性らと決めた店まで歩く私たちだが、彼女とは大きく温度差がある。
服装からしてそうだ。
彼女はやや短めの丈の裾が広がるピンク色のフェミニンなスカートを履き、はっきりと身体のラインのわかるクリーム色のトップスを着て、きめている。
しかし私は丸襟の黒のブラウスに白のパンツを履いていて、露出しているのは足首くらい。
花屋で働き始めてから、動きやすい服装をすることが増えた。
そのためスカートはあまり履かなくなってしまった。
ただショートパンツは履くけれど、こういう場では絶対に履かないと決めている。
「着いた。ここなの……来てるかなぁ」
みなみは浮かれている。
「どうだろうね……」
私は適当に相づちし、この際諦め食事だけを楽しもうと密かに決める。
「本当にねカッコいいのよ。胡桃もびっくりするよ、イケメンすぎて」
みなみは本当にカッコいい人に弱い。
私も女なので、イケメンは嫌いではない。
しかし店長が好きなため、みなみのように気持ちが盛り上がらない。
私が一番カッコいいと思うのは店長だ。
今日の飲み会が店長と一緒だといいのに……
私はため息を吐きつつ、はしゃぐみなみと店の中を進んだ。
そして、予約をしていた個室に着き、案内した店員が扉を開けた瞬間、中にいた男性と目があった。
彼にはとても見覚えがある。
そのため、私は思わず「あっ……」と、声を上げた。
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