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「二人が知り合いだったなんて……」
みなみが小さく呟く声が割ったとき、須賀原さんが「ごめん、座って」と、声をかけたため、私とみなみは個室の中に入り座る。
そこは四人がけの席であったが、奥の隅に須賀原さんがいて、手前にもう一人男性がいた。
そこで私はみなみが須賀原さんと飲みたくてセッティングされた会であるため、須賀原さんの前を外し、みなみを奥にした。
私の前に座る男性はお世辞にもイケメンとは言えない普通の人だ。
長身そうではあるが、それ以外にこれといった特徴がない。
目の前の男性を見ていると目が合い「こんばんは」と、言われたため、同じく挨拶を返した。
「さっき花屋って言ったけど、花屋で勤めてるの?」
私は男性に「はい」と、答えただけ。
すると付け加えるようにみなみが話す。
「田辺さん、会社の向かい側の通りにEiry って花屋があるんですけど知りません?」
「あぁ、ある気がする……」
Eiry を的確に認知されてなくて悲しい。
しかし小さな花屋のため、男性にとってはそんなものなのかもしれない。
「そこで働いてるんです。須賀原さんはよく行かれるんですか?」
「あぁ、すごくいい店だよね」
今度は斜め前に座る須賀原さんと視線が絡んだ。
まだ三度しか来てないのに、“よく”だなんて言ったのは、私に気を遣ったのだろうか。
そうだとしてもいい店だと言われて単純にも嬉しくなる。
「あ、ありがとうございます」
「もうすぐ妹の誕生日なんだ。またお願いするね」
「近いんですね、お母様と」
私の誕生日が須賀原さんの母親の誕生日だったのを思い出して言った。
「うん。二人とも三月生まれなんだ」
「へぇ……。そうなんですね」
私は密かに親近感をまた感じる。
さすがに自分と同じだなんて言えないけど、それはみなみによって須賀原さんに届いてしまう。
「胡桃と同じだね」
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