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すると須賀原さんは私を見つめ「え、三月なの?」と尋ねた。
「はい……」
この流れは、なんとなくまずい感じがした。
「え、いつ?」
私は誤魔化そうと考えるも、みなみが正直な日にちを割って伝えてしまった。
そのため、私は心の中で大きくため息を吐いた。
「え、まじ?」
須賀原さんは驚いた声を上げた。
きっと須賀原さんの母親と同じだなんて、彼にとっては微妙な偶然だと思っているに違いない。
どんな顔をしているのか見たくない。
私はみなみに顔を向け「もう……」と、言った。
すると須賀原さんは「キミ、あの日誕生日だったんだ」と言った。
私は咄嗟に須賀原さんを見つめ、すぐに目を伏せた。
「え、あ、はいすみません……」
須賀原の母親と誕生日が被ってしまい申し訳なく感じている私は、頭も少しだけ下げた。
「え、なんで謝るの?」
「な、なんとなくです……お母様と同じとか……」
きっと、嫌に違いない。
私は心で続ける。
みなみは「えぇ……!」と、やや大きめの声で言った。
狙っている男性と親友が顔見知りだったということも嫌であるに違いないのに、誕生日が同じだなんて、嫌だろう。
みなみにも申し訳ない気持ちになる。
「謝ることないでしょ、今更だけどおめでとう」
だが須賀原さんは少しも気にしていない様子で、そう言った。
「あ、ありがとうございます……」
私はなんとかそう答えたものの、みなみに対しての罪悪感のようなものが消えない。
まだ始まったばかりの会だが、もう帰りたい気持ちでいっぱいだ。
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