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しかし、私、一人で投げたものは二回とも、一つもかすらずレーンの端に転がっていってしまった。
きっと動揺していたせいも、あるはず。
優斗君に「残念だったね」と、言われ、私は無言で頷いた。
「難しいですね……」
「うん。でも、はじめは真っ直ぐ転がってたから、もう少し力を入れたら当たりそうだったんじゃないかな」
「そうなんですか」
しかし、彼の分析もむなしく、次の番、その次と回ってきて投げるが、うまく倒れない。
反して優斗君は調子よく、多くのピンを倒していく。
やはり経験の差なのか……
結局、私は1ゲーム間で、両手で数えられるほどしか倒すことができなかった。
彼は数えきれないほど、倒したというのに……
少し、悔しい。
だから優斗君が「もう1ゲームする?」と、言ったとき、私は頷いた。
「じゃあ二回戦の前に何か飲まない?買ってくるよ」
私も喉が乾いていたため、「私も行きます」と、伝えた。
私たちは自動販売機のある場所に足を向ける。すると、そこには同じく飲み物を買いに来たはる君に遭遇してしまった。
はる君は私を見て「また、会ったね……」と、言って苦笑した。
「……う、うん」
私は笑えない。気まずいのは、隣に優斗君がいるせいだ。
「先にどうぞ」
はる君は、自動販売機の前から一歩下がり、私たちに順番を譲る。
「いいよ、はる君、先に並んでたじゃない」
「いや、今悩んでたから……」
「そうなの?」
「うん。だから、先にどうぞ。胡桃ちゃんの好きなものあるよ」
私は自販機に陳列されたペットボトルを見つめた。
たぶん、はる君の指しているのはミルクティーだ。
学校の帰り道、彼と学校の側で会うときは、私はいつもそれを飲んでいた。
きっと、はる君はそのことを覚えているに違いない。
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