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一番奥の席まで戻ると、彼は手を離したため、私は椅子に座った。優斗君も、隣に腰を下ろす。
「ミルクティー、ありがとうございました」
私は、お礼することすら、忘れていた。胸が今になって、ドキドキと、音を立てていることに気がついた。
「いいよ。開けられる?」
優斗君は優しい顔で微笑む。
「はい」
私は蓋を開けて、冷たいミルクティを口に含んだ。
熱い喉が潤っていくことが気持ちがいい。
「胡桃……」
「はい」
優斗君の顔が私を見つめている。
彼はまだ、珈琲を飲んでいなかった。
「いや……」
彼は、はる君のことを気にしている。
それは、わかったが、何も言えない。
「それ、美味しい?」
だって、話を逸らされたから……
「はい」
私は彼の手にある無糖の珈琲に目を向けた。それはひどく苦そうだ。
「あ、あの少し飲みます?」
「え、いいの?」
「はい……」
私は自分でも不思議だったが、彼にミルクティーを差し出した。
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