ラズベリー

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「はる君……」 懐かしい…… 四年近く振りの彼は変わらず須賀原さんほどではないが、爽やかな見た目だった。 「久しぶりだね、変わってないからすぐ気がついた」 「はる君も、変わらないね」 私と同じ年の高田(たかた)はるは、高校を卒業する少し前から、ふた月だけ付き合った男だった。 なんとなく、友人に紹介されて付き合った彼だが、彼の浮気で別れた。 私は“彼氏”という存在に憧れていて、そこまで気持ちが高まらなかったが、はる君と付き合った。 付き合うとそれなりに気持ちは向く。だから別れはそれなりに堪えた。 しかし、思えばフラれて当然だ。 だって、私はそこまで好きではなかったのだから。 そのあとすぐ、店長に恋をして、彼のことを思い出すことも減った。 しかし、まさか、こんなところで会うなんて…… 世の中は狭い。 「彼氏?」 「……へ?」 はる君は優斗君に目を向けた。 彼は私たちに気がついておらず、ピンク色のボールの前でまるで悩んでいるように、腕を組み頭を傾けていた。 「めちゃくちゃかっこいいじゃん」 私は「う、うん……」と、適当に答えると、彼は笑った。 「胡桃ちゃん、今度ゆっくり話せない?」 「え?」 「ちゃんと、謝りたい……」 はる君の視線は真剣だった。 「浮気のこと?」 するとはる君は苦笑して「そう」と、言った。 「いいよ、私こそ……謝らなくちゃいけない」 あまりはる君と次回に持ち越してまで会いたいとは思えない。  そのため、今、口にしてしまったのだと思う。 「俺のこと好きじゃなかったから?」 だから、その台詞に私は驚いた。
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