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2ゲーム戦は、どこか気まずい空気の中、始まった。
優斗君も、1ゲームの時ほど、調子がよくない。
それは、私のせいなのだろうか、と思わずにいられない。
「上手くなってきたね」
反して、私はピンが倒れるようになってきた。
少し、コツをつかんだ、そんな感じがする。
「なんとか……少しコツを得ました」
「そう」
優斗君は笑うが、どことなく元気がなかった。
相変わらず、私を見つめる目は優しい。
それだけに、胸が締めつけられるような、変な感覚に襲われる。
その時、反対奥のはる君のいる辺りから、「おぉ」と、いう男性たちの盛り上がる声がした。
私と優斗君の視線は、反射でそちらにとられる。
どうやら、視線の先のはる君の友達が、ピンをすべて倒したらしく盛り上がっているような感じだ。
私はすぐに、優斗君に視線を戻したが、彼はまだ奥を見つめていた。
「ゆ、優斗君」
彼の目が、ようやく私を見つめた。なんとなく、ほっとしてしまう。
「あ、俺か……」
「そうですよ。頑張ってください……えっと」
次の順番は優斗君だ。
私は、立ち上がった優斗君のシャツの裾を掴んだ。
たぶん、元気になってほしかったから……
「ん……?」
「また、全部倒したの、みたいです」
「え?あぁ……」
優斗君は、目を細めて笑う。それから、若干口の端を上げた。
「もし、倒れたら一ついうこと聞いてくれる?」
「え……?」
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