オレンジ

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ボールが転がると、私より早く優斗君が「やった!」と、喜びの声をあげた。 「すごいですね」 「ありがとう」 私は“約束”を一瞬忘れ、感激し席を立った。 もう少しで隣のガーターレーンに落ちそうだったのに、彼の放ったボールはピンに命中したのだから。 すごいと、思った。 「倒れるとは思わなかったです」 すると、優斗君も「俺も……」と、自信なさそうに言った。 「胡桃との約束のおかげ」 「あ、あぁ……」 もちろん、忘れてなんてない。 つい、先ほどのことだから。 「な、なんですか?」 しかし、若干胸の内がざわざわしているのは、何を言われるか想像ができないから。 私を好きだという優斗君からのお願い事は、私の胸をドキドキさせる。 「そうだなぁ……」 「……はい」 私は上目遣いに彼を見つめて、次に発される言葉を待った。 周りの雑音が聞こえないほど、私の耳は彼の声に集中する。 「ゲームが終わるまでに考えとくよ」 「え、あぁ、わかりました」 優斗君には、考えがあってのこととばかり思っていた。 時間を置かれたことに、ホッとしてしまう。 「次は胡桃の番」 「あ、はい」 「もし全部倒したら……俺も何かいうこと聞くよ」 彼はそう言って笑ったが、初心者の私が倒せることはなかった。
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