オレンジ

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「何ですか?」 先ほど出した声より、掠れた。たぶん、緊張しているせい。 二人きりの空間もそうさせる。 彼の瞳も真剣で、あまり見つめると吸い込まれてしまいそう。 一体彼は何を言うのだろう。自然と、膝の上に置いた拳に力が入る。 「そんなにかまえないで」 私の表情は、かなり固いに違いない。 「……はい」 「今日さ、家に泊まってよ」 「……え?」 それは、予想していなかったもの。 もっとすごいことを想像していた気もするし、そうでないことを言われると、思っていたかもしれない。 だが、今全部吹き飛んだ。 「お泊まり……ですか?」 「うん。明日も出掛けるから、ちょうどいいよね?」 「優斗君の“いうことを聞く”は、それですか?」 「うん」 「……わ、わかりました」 一度彼の家には泊まったことがある。 だからかもしれない、警戒心がそこまでなかった。 よく考えれば、すごいこと、なのに……
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