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決定された約束のために、私は一度家に帰ることになった。
といっても、荷物をとってすぐ、優斗君の車に戻るわけである。
「そういえばさ、昔の……彼氏に、何か言われた?」
優斗君はハンドルを握り前を見つめながら、言いにくそうに尋ねた。
ボウリング場を出る際、偶然にもはる君も帰るところだった。
今まで全く会わなかったのに、偶然とは不思議だ。
ちょうど、優斗君が会計後にトイレに行った際、はる君に肩を軽く叩かれたのだ。
はる君とは、優斗君が出てくるまで少し、話をした。
「あぁ、お互いの近況を少し……」
「そっか」
「……はい」
それからは、しばらく沈黙が続いた。
隣を盗み見ると、優斗君は真面目な顔をしていた。
気まずい空気だ。そんな中、助けるように鳴ったのは私の携帯の着信音だ。
「出ていいよ」
「すみません……」
私は鞄を探り、携帯を取り出した。
しかし、電話の相手を確認して、私は取るのを躊躇った。
「出ないの?」
「……はい。あとで、かけ直します……」
すると、彼は間をあけたあと、「もしかして、さっきの……元カレ?」と、聞いた。
私ははる君と別れて、彼の番号をすぐに消した。きっと、彼も同じはず。
「違います。母です……」
今、鳴り響く電話の相手は、私が敬遠してしまう母だった。
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