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あまりそんな瞳で見てほしくない。
彼を意識してしまいそうだから……
優斗君は部屋にあがると、「いい匂いするね」と、言って部屋を見回した。
私は母の荷物をテーブルに置きつつ、「前に話したアロマ液の匂いです」と、言った。
「そうなんだ。いい香りだね。なんか、胡桃の部屋らしい。花がたくさんだね」
「え?あぁ……」
生花は今、飾ってないものの、雑貨は花柄が多い。
「落ち着かないですか?」
「いや、小柄の花柄が女の子らしくて可愛い。胡桃、黄色、好きなんだね」
「はい」
部屋の色は黄色が多い。私の好きな色。
「俺も黄色、好きだよ」
「……そうですか」
彼の“好き”が今、妙に私の胸を刺激した。
二人きりだからか、心が弱っているからか、それとも、彼の瞳が優しいからか……
「そ、ソファに座っててください。準備します……!」
私は慌てすぎた。だって、テーブルの脚に、自分の足があたり、母の荷物のバランスを崩してしまった。
たくさん入っていたオレンジが床に転がる。
だが、私は「いたっ……」と、ぶつけた足を押さえた。
「大丈夫?」
彼が座り込んだ私を後ろから支える。
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