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「ごめんなさい、大丈夫です……」
優斗君は私が大丈夫だとわかると身体を離し、床に散らばるオレンジを集めはじめた。
しかし、袋に戻そうとしたところで手を止めた。
きっと弁当箱を気にしている。
「胡桃……」
「はい」
私は顔を上げ、彼を見つめた。
「これ、出していい?」
やはり、彼の指すのは母の持ってきた弁当箱だ。
私も、とても気になっていた。しかし、彼の手前触れられなかった。
「……はい」
私はひどく子供だ。
今、優斗君に私はどんな風に映っているだろう。
「オレンジは戻すね」
「……すみません」
彼は弁当箱をテーブルに置くと、袋にオレンジを戻しはじめた。
私はゆっくりと弁当箱に手を伸ばし、蓋を開けた。
中には今晩のおかずだったのだろうか、唐揚げが入っていた。
こんなことをされるのは、はじめてだ。
それに、帰らないと伝えたのに、これが入れてあったということは、母には嘘がバレていたということになる。
「……どうしよう」
私の呟きに彼が反応し、私を見つめる。
きっと、今の私はすごくひどい顔をしているに違いない。
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