ラズベリー

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私は決して優斗君が好きではないのに、おかしい…… しかしどうすることもできない。 “どうして聞かないんですか……?”なんて、聞けるはずがない。 優斗君はゲームを始めようと、椅子の側にある画面を操作し始める。 私は座ったまま、彼を見つめるだけだ。 「よし、始めるよ。まずは俺からね……」 彼の視線が私を捉えた。真剣に見ていたため、私はあからさまにそれを逸らしてしまった。 「はい……」 「まずは見てて。あんまり上手くないけど、投げる場所はわかると思うから」 「はい」 優斗君はボールのある場所へ行き、それを取るとレーンの前に立ち、私のほうを一度振り向いた。 「投げるね」 「あ、はい。頑張ってください……」 私が小さく声援を送ると、彼が笑った。 「頑張る」 その顔はとても爽やかで、少し離れたところにいるのに胸にくる。 イケメンってズルい。 優斗君がボールを手から離すと、それはピンへ向かって転がり始める。 さすがに、全部倒せばいいというルールはわかる。 私は無意識に両手を合わせ祈るポーズをとったとき、ピンはすべて倒れた。 優斗君は「やったね」と、私のほうを振り返った。 その笑顔に私もつられた。
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