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優斗君は隣に座ると、私に両手を広げてみせた。
私は「え?」と、首を傾げつつも、反射で両手をあげる。
すると、掌に彼の手が合わさった。
優斗君は「イェイ」と、言うと手を離した。
私は全部倒れたときはこうするのかと、密かに学ぶ。
「すごいですね、全部倒れたらいいんでしょう?」
「そう。今日は調子がいいみたい。よかった……」
優斗君は暑いのだろうか、首元を開け空気を入れ込もうと仰いだ。
「暑いですか?」
私も手伝うように彼に、手を仰ぐように動かした。
「うん。胡桃が見てるから緊張した……。“見てて”って言った俺が思いきりはずしたらカッコ悪いから」
優斗君は頭をかいて、恥ずかしそうに笑った。
そんなことを考えていたなんて……
優斗君はスマートに投げていた気がした。
少しも焦りは感じなかった。
「カッコよかったですよ」
それは自然に口から出た。
だって、本当にそう思ったから……
「え?」
「あ、えっと、全部倒せたところとか……」
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