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それでもボウリングのピンを見つめ、意外に遠いが届くのだろうか、と考えた。
「これ、どう投げてましたっけ?」
急に不安になり優斗君を見上げた。
すると、優斗君は私のすぐよこに来て、なんと私の身体の後ろから包みこむように彼の身体を合わせた。
優斗君の左手は私の左腕を押さえ、背中には彼がとても近い。
「ゆ、ゆう……」
戸惑わないわけがない。
私の胸の鼓動が激しく動き始める。
「こんな風に投げるといいよ」
しかし彼は右利きの私の右手を後ろから支えて、ボールごと、上下に動かしてみせただけだ。
ただ、教えている、それだけ……
近い距離にドキドキしているのは、私だけかもしれない。
「場所は少し左がいいかなぁ……」
「……はい」
恥ずかしい、早く離れて欲しい。
それなのに、彼が近くから私を覗き込んでくる。
「できそう?」
「は、はい……」
私はすぐに視線を逸らした。
「手を離すね?投げてみて」
優斗君の身体がようやく離れた。
私は緊張が解けて、ボールをただ落としただけになってしまった。
しかし、それでも前へゆっくりと進む。
私がボールを目で追うが、まだドキドキしている。
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