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一人暮らしをはじめてからひどい風邪を引くことなかった。
それに少し不調でも寝ると大体よくなっていたため、体温計は不必要だった。
留実ちゃんに、「熱は何度あるんですか?」と聞かれ、体温計がないことを伝えて驚かれたのは彼女がこの部屋を訪れたときだ。
でも、優斗君がなぜそれを知っているのだろうか……
しかし、聞く間はなく彼に「熱を……測ったほうがいいよね」と言われた。
「えっと、はい……」
せっかく買ってきてくれたのだから、ここは測るべきかもしれないと、私は首を縦に振った。
「お邪魔……するね」
「ど、どうぞ……」
気まずい空気の中、彼を中へ招く。
靴を揃えてあがった彼はすぐ手を、私の背にさりげなく添えた。
たぶん、私を気遣って……
だって、私の身体はふらつき気味だった。
私をソファに座るように誘うと、彼は手を離した。
私の部屋がもっと広かったなら、もっと触れてくれていたかもしれない。
やや寂しさがあったものの、優斗君は私の斜め前に腰を屈ませ、私の顔を下から覗くから、近くで見つめられてそれはすぐに忘れる。
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