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「胡桃さん本当に彼氏とかいないんですか?」
その質問は今まで、彼女から何度もされたものだが、毎回否定してきた。今回もそう。
だが、今は心がやけに虚しい。
「うん」
「そうですか……。じゃあもしきついときは連絡ください。バイトが終わったら来ますから」
彼女はなんていい子なのだろう。
それは元々わかっていたことだが、今は弱っているせいかそれをより感じた。
「ありがとう」
とても電話はできないけど、気持ちはありがたさでいっぱいだった。
「いいえ、困ったときはお互い様です。あ、そうだ薬も買ってきたんですよ……」
彼女はそれから、清涼飲料水の入ったペットボトルを冷蔵庫にしまってくれ、冷却シートやお弁当をテーブルに並べたあと「お大事にしてくださいね」と言って帰っていった。
私は鍵を閉めるため、玄関先まで見送ったが、留実ちゃんが帰ってしまった部屋を改めて見ると、ひどく寂しさを感じた。
私は彼女がせっかく買ってきてくれた食べ物を食べる気にもなれず、まずソファーの上に寝転がった。
身体は寒いような熱いようなよくわからない感覚だが、何も被らなくても平気だったためそのまま眠りにつく。
それからどれくらい経っただろう……
部屋のチャイムが鳴った。
配達物だろうと思ったので、一度目は心でごめんなさいと言って無視した。
しかし、二度目のチャイムが鳴ったあとすぐ、私の携帯が音を立てる。
なんとなく、彼の気がした。根拠もないのに、私は携帯の音を無視して、訪問者を確認したいと立ち上がった。
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