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身体がさきほどよりふらつく。
たぶん、ベッドで寝なかったせい。
それでも訪問者が気になる私はよろよろとしながら、インターフォンの画面を映すスイッチに触れた。
そこに映っていたのはやはり、彼……だった。
私の胸に嬉しさと、苦しさが広がる。
だって、彼の顔はひどく暗い感じがした。
「……はい」
私の声は震えている。
彼にそれが伝わっているかは、わからないけども。
「お届け物を持ってきました……」
「……え?」
私はそれに心当たりがない。
しかし、すぐに「風邪、ひいたんだってね大丈夫?」と、言われそれを忘れる。
「な、なぜ……?」
その疑問と同時に、留実ちゃんの顔が浮かぶ。
でも、留実ちゃんと彼はどうしても結びつかない。
「少しだけ……お邪魔してもいいかな?すぐに、帰るから……」
彼の目が伏せられる。
前みたいに強引でないのは、やはり彼女の存在があることを私が知ったと確信しているのだろう。
「あ……はい」
「ごめんね」
彼のその声もひどく申し訳なさそうで、胸が痛い。私は画面に彼が映らなくなっても、彼が昇ってくるまで、そこから動けなかった。
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