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やはり彼はかなり忙しかったらしい。
私は風邪が治り今日で六日目になるが、平常の生活に戻ったものの、あれから優斗君と会うことはなかった。
それでも電話とメッセージのやりとりはしている。
電話はときどきだが、彼がメッセージをくれるのは毎日で、私は時間があるときは必ず返信をするようになっていた。
あれからみなみには一度会った。お礼に晩ごはんをご馳走したのだが、その際やはり彼は忙しそうだと聞いた。
いつも早く出勤して、残業をしている感じだと聞き、私は心配になる。
まだ、彼にお礼もできていない。
それに、彼の姉が来たことも伝えていない。
彼と直接話がしたいし、会いたい。
そんな思いが胸をかすめるようになっていた。
だから、私にとってはかなりの変化だったと思う。
店が定休日の今日、朝から早起きして弁当を作った。
男物の弁当箱は、昨夜近くのスーパーで買ったばかり。私のものではなく彼のものである。
みなみに会った日に、彼女に冗談に「手作りのお弁当でも差し入れしてあげたら?」と、言われた。
それを本気にして、今日の私がいるのだが、彼が会社にいるかもわからないのに、勝手に作り彼の会社の前に来てしまったのは、午前11時過ぎだった。
もし、渡せなかったら自分で食べればいい……
そう思って、両手で弁当の入った袋を持ち、どうしていいかわからず、しばらく通行人の邪魔にならない道の端で佇んでいた。
すると、うしろから肩を叩かれた。
もしかして彼だろうかと思い振り向くと、そこには前に合コンで一緒になった彼の友人、田辺さんが立っていた。
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