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彼との関係がキスしたことで大きく変わった翌日、彼へさっそく弁当を作り届けた。
彼はとても喜んでくれ、私はそれが気持ちがよく、母の日の二日前までその行為を毎日続けた。
彼がお礼にと、夕食を奢ってくれることも多く、私たちは確実に時間を重ねた。しかし関係は軽いキス止まり。
まだ進展はなかった。
それが大きく変わったのは、母の日の翌日だ。
彼の母親へのプレゼントの鉢を、彼の実家へ届けることとなった。
それは約束だったが、私は当日になって緊張し始めた。
だって、彼の実家へ行くということは、簡単なことではない。
「優君、私大丈夫でしょうか……」
月曜の夜、仕事終わりの彼と私の家の最寄り駅で待ち合わせをした。
鉢は私の手元にある。彼に預かっていて欲しいと言われ、昨夜自宅に持って帰っていたものだ。
私は彼の姿を見つけた途端、それを尋ねた。
「大丈夫って?」
「今さらですが、優君のご実家に一緒に行くことに緊張してきました」
ただ鉢を運ぶ手伝いをするだけで、彼の親に会う気はない。
しかしばったり遭遇したりしたらどうしようと、考えている。
素直に気持ちを伝えると、彼に「大丈夫だよ」と言われてしまう。
彼は私の手から鉢の入った袋を取ると、私の手を取り電車へ乗り込んだ。
彼の実家のある最寄り駅にはすぐ着いて、私は胸をさらにドキドキさせていた。
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