ストック

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「ごめん……みなみ……」 私は涙を流しつつも謝った。 「ううん、いいよ。私の前なんだし……。須賀原さんの前でも泣いたらいいよ」 それからみなみは「店長の前では泣いちゃダメだよ」と言ったので、一瞬泣き声が止まり、私の身体もビクリと震えてしまった。 「……胡桃?」 私の様子にみなみはやや不審な声を出す。 私は手で涙を拭い、彼女を見つめた。 「……みなみ、実はね」 「うん」 「店長に告白されたの……」 「へ……!いつ?」 「今日の、昼……」 私が声を震わせながら言うと、みなみが平坦な声で「店長に話したの?」と聞いた。   「……うん」 「……なんでよ、須賀原さんが可哀想。胡桃は須賀原さんが好きなんじゃないの?まだ店長も好きなの?」 みなみは興奮したように言った。 「……」 「胡桃……」 みなみには優君と付き合いはじめてから、優君とのことをたくさん話した。 みなみは「いいなぁ」と言いつつも、私たちを祝福していた。 「……それに店長、彼女は?」 「……別れたって……」 「何よそれ……」 私たちの間に沈黙の時間が訪れる。 こんな相談のし方をしたかったんじゃない。しかし頭が回らない。   ようやくみなみは口を開き「……もしかして、迷ってるの?」と聞いたのだが、そのとき私たちのすぐ後ろの席の人が大きな音を立てて立ち上がる気配を感じたので、私もみなみも思わず顔を振り向かせた。 「……あ」   そう口にしたのはみなみだ。ただそれもそのはず、そこには顔だけ知っている優君のことが好きな岩切さんの姿があったから。 彼女は何も言わず、私を一瞥すると店を出ていってしまった。
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