ストック

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「店長は……」 「うん」 「前の彼女さんとはずっと遠距離でしたよね」 私から店長の彼女のことを触れるのははじめてのこと。 ずっと聞きたくないと思っていたため、気になるが避けていた。 今、簡単に聞けたのは、嫉妬を感じないからだろうか。 「そうだよ」 「どうして、別れちゃったんですか?」 私が無遠慮に聞くと「彼女が浮気したから」と言った。 「……浮気ですか」 「そう。彼女は否定してるけど、ちゃんと証拠もあるんだ……。相手の男は僕の友人だったから」 店長はひどく辛そうな顔をして、ビールを煽った。店長の心の傷は深いのだろう。 「胡桃ちゃんは僕が嫌い?」 「……え」 「好きだよね。ずっと、見てたんだから」 「……」 「まだ好きでしょう?簡単に彼を忘れられると思うよ」 店長の言い方はなんだか意地悪で、少し攻撃的にも感じる。     「……ずっと好きだったんだから、彼を忘れればいいだけだよ。これから絆を深めよう」 店長がそう言ったとき、治人さんが戻ってきた。 私はそれにひどく安心してしまう。 治人さんが戻ると、話題は仕事の話へチェンジした。 それから三人で食事を続け、二時間ほどで店を出たとき、店長に別れ際「またね」と頭を撫でられた。 ちょうどそのとき、店の扉が開いてお客が流れ出てきたので、店長に腕を引かれ店の出入り口から離れる。 なんとなくお客を見ていると、その中に岩切さんの姿があり、私と彼女は互いに見つめ合った。
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