ストック

2/21
107人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
私の気持ちがよりたしかになってから、彼と会う時間はぐんと増えた。 何度も外でデートを繰り返し、定休日の日の前は彼の家へ泊まることが増えた。 それに彼の休日には、私の家へ彼が泊まりに来るのが定番になっていた。 私の部屋にも彼の部屋にも、確実にそれぞれの日用品や服が増えていき、ますます恋人という感じがする。 二つ並ぶ歯ブラシはもちろん、互いの服や下着があるのにも慣れ、私の部屋には彼用の小さなチェストが増えたほど。 彼と出会ったのは春のはじめだったが、季節は夏の終わり頃になっていた。 彼と過ごしはじめ季節が一つ変わったのに、彼とはいまだ一線は越えておらず、触れるだけの関係が続いている。 その中でただ一つだけ、変わったことがある。 それは店長が彼女と別れたことだった。その事実を知ったのは七月の終わりだった。 たまたま留実ちゃんが「彼女さんはお元気ですか?」と何気なく尋ねたとき、店長は寂しそうに笑って「別れたんだ」と言った。 私はとても驚いたが、特に何かをするわけではない。 ただ店長がフリーなのを優君もたまたま知ってしまった。 それは優君に夕食を誘われて、彼が私をエイリーに迎えに来たときのことだった。 店長が終業後、お疲れさまでしたと言い優君のもとへ行こうとする私に「いいね、独り者には羨ましいよ」と声をかけてきた。 それを優君は聞いていて、私に「彼は彼女と別れたの?」と尋ねた。 優君が不安になるのはなんとなくわかったが、嘘をついてもよくないので、私は頷く。 しかし、彼は「そっか」と言っただけでだったので、私はホッとしていた。 しかしそれからひと月ほど経ち、優君との関係は変わっていないが、彼はどこか様子がおかしい。 それは私が忙しいお盆の時期からで、もしかすると店長のことを気にしているのかと思い始めていた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!