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「治人さん、私どうしたら……」
彼に聞いても答えは出ないのはわかっている。でも尋ねられずにいられなかった。
「胡桃ちゃんの思うように進めばいいよ」
「……」
「それが胡桃ちゃんにとって、一番難しいかもしれないけど」
治人さんは笑って言った。
それから続けて「なかなか冷えるな、帰ろうか」と言って、私の背を押してくれた。
その手はすぐに離れたが、私が欲しい手でないと感じた。
優君……
彼は今、どうしているだろう。
まだ私を好きだろうか……
もしかすると素敵な彼だから、シンガポールで私なんかよりずっといい女性に巡りあえたかもしれない。だって、彼は簡単に私を好きになったのだから……
でもそこで思い出す。
隣を歩く治人さんの言葉を……
「治人さん……」
「ん?どうした」
「私、もっとちゃんと……します」
私は上手く口にできない、でもたしかに感じている思いを治人さんに伝えた。
治人さんはそれなのに、私の頭をグシャグシャという風に撫でて「頑張れ」と言ってくれた。
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