ストック

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「いつから行っちゃうんですか?」 10月1日からだということはそれより前であるはずだ。 「二週間後……」 「え……」 まさかそんなことがあるなんて…… ぼんやりと同じ日々が続くと思っていたが、これはショックすぎる。 「……少し忙しくなるから夕食を食べに行ける日が減るかもしれないけど、なるべく時間作るよ」 「……」 「荷物を纏めるのは引っ越し業者に頼むつもりだから、これまで通り休みの日は泊まりにおいで」 彼の中ではシンガポールへ行くまでの私とのことも、ちゃんと考えているようだ。 しかし、私はついていけない。 「……ごめんね、ほんと。驚かせて……」 「いえ……」 彼は悪くない。 でも、私はどうしたらいいのだろう…… その夜は今までにないほどギクシャクした時間を過ごした。 ドキドキするが私の安心する場所になりつつある彼の腕に包まれて横になったが、少しも眠れなかった。 彼は気づいていたのかいないのか、私を抱き締めてくれていただけで、何も言わなかった。 日曜日は私は仕事なので、彼と共に家を出る。今日もそうだったが、今朝は互いに無言でいることが多かった。彼と駅で別れると、ますますぼんやりする。 それは仕事中も変わりがなかった。 店長に「胡桃ちゃん、今日どうかした?」と言われるくらい。 それは治人さんがいない時だった。 「いえ……」 「もしかして、彼氏と喧嘩した?」 店長が優君の話をするのはこれで三度目だ。 「いえ……喧嘩とかならまだ……」 喧嘩を彼としたことがないが、まだ喧嘩がよかった。 たぶん喧嘩なら、店長に話してしまうことはなかっただろう。 今は動揺が大きすぎる。 私の口からそれがこぼれた。 「ん?どうしたの?僕でいいなら聞くよ」 店長が優しい口調で言った。 なんだか泣きそうだ。 「……店長」 「ん?」 さすがに仕事中なので泣かないが、きっと私の表情は頼りない。
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