ストック

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お客が帰る頃、治人さんが店に戻ってきたので、告白の続きは聞くことがなかった。 時より店長からの視線を感じたが、気づかないふりをした。 きっと昔なら、簡単に合わせていたかもしれないのに…… 店が閉まる頃、私は駆け足気味に店を出た。 治人さんと共に出たことで、店長には止められなかった。 でも明日も会う。 私はどうしたらいいのだろう。 日曜の夜は優君が休みなので、大体外で食事をする。それからお泊まりコースだが、今夜は職場の先輩と飲み会があると言っていたため、私は真っ直ぐ帰る。 しかし一人になるのが怖く、みなみを呼び出した。 彼女は合コンだったが、私の声が頼りないために、一次会が終わる頃、会おうと言ってくれた。 私はそれが終わるまで近くのカフェにいて、それからみなみがやってきたのは30分後くらいだった。 「ごめんね、お待たせ」 みなみはお洒落な服でいて、いかにも合コン帰りという感じだ。 「ううん、私こそごめんね、合コンだったのに……」 「いいのよ、イケメンいなかったし……」 「……そっか」 本当かどうかわからないが、それは彼女らしい言葉だ。彼女が私の前に腰を下ろし、私の顔を除き込む。 「で、どうしたの?須賀原さん?」 「うん……」 「……そっか、ついに……話したのね」 「……」 異動のことは話してないのに知っている様子なのは、同じ会社だからだ。ただ、優君が私に言えないでいたのも知っていたような言い方で、何も言えなくなった。 「ごめん……」 彼女はつい口が滑ったように感じる。しかし優君が私に言えずみなみに相談していたと想像すると、みなみだって心配で仕方がなかったはずだと思うから、私はそれにただ首を左右に振っただけだった。 「胡桃……付いていくとか……そういう話した?」 「え……う、ううん。付いきてとは言われてない。でも、もしもの話で付いて来てくれるかって突然聞かれたけど、驚いて何も言えなかった」 「そっか……。そうだよね、簡単じゃないもんね」 みなみが同意してくれたことがきっかけか、我慢していた涙が溢れ出た。 本当に簡単なことじゃない。まだ全然受け入れられない。 どうして行っちゃうんだろう。なぜ彼なのか…… 「胡桃……」 私が泣き出したことで、みなみが私の隣に来て背を撫でる。 そのためより涙が溢れた。
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