コットンキャンディ

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マンションは高さのある建物で、部屋数が多そう。 暗くて新しいのかはわからなかったが、エントランス部分は綺麗だった。彼の部屋は5階である。 私は手に持つメモ紙に書いてある部屋の号室を、何度も確認し、上へのぼった。 胸のドキドキはマックスに達している。 それに彼の部屋の玄関の扉の前に立ったときは、ひどく胸が高鳴り、うるさかった。 彼はいるだろうか…… 私は部屋のチャイムを鳴らそうと手を伸ばす。 しかし押せない。 とても緊張していて、それを押すことができなかった。   落ち着かなきゃ…… 私は深呼吸を深くして、一度心を落ち着かせようとした。 それからもう一度、チャイムを鳴らそうと手を伸ばしたとき、目の前の扉がゆっくりと開いた。 私はまだチャイムを鳴らしていないはず。 どうしてだろうと思ったものの、答えが出るより早く扉が大きく開かれた。 すると中の様子が私の視界いっぱいに入ってきた。 目の前には会いたくてたまらなかった、優君の姿がある。 私が知っている彼より、少しだけ髪の毛が短くなっていたが、彼だ。 少し痩せた気もするが、間違いなく優君だった。 「……胡桃」 彼はとても大きく目を見開いて、私を見つめた。 きっと、彼の視界にも私の姿がいっぱいに映っているはず。 しかし私が彼の名を呼び返す前に、「……だぁれ?」という女性の声が、私たちの間を割った。
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