コットンキャンディ

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女性がいる…… 私は彼ばかりを見つめていたため、彼の後ろに女性の姿を確認して驚いた。 同時にとてもショックを受ける。 「……ゆ、優君……」 私が掠れた声で彼を呼ぶと、女性は優君に近づき、後ろから彼の腕に自身のものを絡めた。 私はますますショックを受ける。 彼女は優奈さんに見せてもらった写真の女性ではない気がしたが、とても綺麗な人だった。 彼女はまるで私を敵視するように、鋭く見つめている。 女性は優君の“彼女”なのだろうか。 彼はカッコいいうえ優しいので、すぐに恋人ができるのは自然だ。 だが、心の隅では彼が私を待っていてくれていると、思っていた。 それは、私の思い違いだったよう。 「……胡桃、どうして……」 彼は彼で戸惑っている。 ずっと聞きたいと思っていた低いが柔らかい声が今は掠れている。 私はスーツケースを自身の後ろに隠し、両手でカゴを包んだ。 きっと丸見えだろうけど、心もとない。 逃げ出したい…… このまま走って離れたい、と考えたがせめて、私の気持ちを伝えたいと思った。 「あ、あの……!」 私の声が静かなフロアに響く。 胸がパンクしそうに音を立てていた。
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