コットンキャンディ

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「優君にお、お話があって来ました……」 最初は意気込んでいたのに、言葉尻が小さくなる。 だって、伝えたいのは優君だけなのに、聞いてるのは彼だけじゃない。 私の気が一瞬、弱ったところに女性が「家まで送っていってくれるんでしょ?」と、彼に言った。 彼女が優君の顔を覗く仕草が、可愛らしい。 しかし私は心苦しい。 家を行き来する関係ということは、恋人で間違いないだろう。 もしかすると、今から彼女の家に泊まりに行くのかもしれない。 優君と私が付き合っていた頃のように、彼は女性の部屋に泊まるのだろうか…… 彼女の言葉から一瞬で色々想像した。 ヤバイ、負けそう…… 私は明らかにお邪魔虫だ。 ただ彼が私を追い返す言葉を発さないことだけが、救い。 それでも彼の表情は無で、何を考えているのかわからなかった。 私は俯き、一度二人から視線を逸らした。 両手で大切に抱えている“cotton candy”の入ったカゴを見つめる。 彼に渡せたら、と思いを込めたブーケはカゴの上からでは見えない。  だけど、ちゃんと彼に気持ちを伝えるという私の決意を思い出させる。 すごく考えるのも嫌だったけれど、こういうことも少しは想像していたはず。 私の気持ちを伝えたら、二人の前から離れたらいい…… 「ゆ、優君……」 私は勢いよく顔を上げ、彼を見上げた。 彼の表情は少しの間だったので、変わりがない。 しかし彼はようやく「ちょっと、待ってて……」と言葉を発した。 それは私に向けての言葉だ。 私がそれに頷くと、彼は視線を彼女に向け「ごめん、今夜は夏井に迎えに来てもらうように言うから……」と言って彼女の腕を解いた。
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