コットンキャンディ

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優君はもう一度私を見て「本当にちょっとだけだから、待っててね」と言うと、部屋の中へ行ってしまう。 彼は何をするのだろうと不思議に思ったが、すぐに彼女と玄関で二人きりになってしまったことに、戸惑いを感じた。 女性は変わらず私を鋭く見つめている。 私はたまらず視線を逸らすと、彼女が小声で「私たちの邪魔をしないで」と言った。 私たちとは優君と、彼女だ。 何を、と聞き返さなくてもわかる。 「せっかく彼が私の部屋に来る予定だったのに……」 彼女の言葉に心が“ガーン”と何度も音を立てるよう。 実際に耳にするのと、想像するのではショックが違う。 胸が苦しい…… 「帰れば?」 彼女はそれを望んでいるのだろう。 しかし彼は待っていてと言ってくれた。 彼と、自分を信じてもいいだろうか…… 優君は本当にすぐに戻ってきた。 ホッとしたような、そうでないような複雑な感情が胸を駆ける。 待っていてよかったのか…… 今、私はどんな顔をしているだろう。 ただ、優君の顔は少しだけ優しくなっている気がした。 「胡桃、部屋の中で待っててくれる?」 「……え」 「彼女を下まで送ってくる」 「……はい」 彼は私のスーツケースを玄関に入れると、私の背を軽く押し部屋の中へ誘った。 懐かしい彼の手、暖かいと聞いて薄めのトップスを着ているため、彼の体温を強く感じる。 しかし彼女が玄関の端に立ち、私を見つめているので浸れない。 やはり女性は優君の“彼女”なのだろうか。 優君の発した“彼女”という言葉が、私を苦しめる。
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