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「エアプランツには“不屈”という意味があるんだよ。厳しい環境でも育ち、花を咲かせる特徴からそう言われてるみたい」
「不屈……ですか」
「うん」
「店長……ありがとうございます」
明日は、負けずに立ち向かいたい。
私はそれを胸元に持ってきて、店長を見つめた。
「いってきます」
私が行くのは明日、でも店を出るとき、店長にそう言った。
彼は爽やかな笑顔で、送り出してくれた。
ブーケは本当ならキーパーの中に冷やしておいたほうがいい。しかし、私は明日の飛行機は9時前と早い。
とても店に取りに来る時間はないかもしれないと思い、大きな保冷剤をカゴに入れ、ブーケを立てた。
帰宅したらすぐに冷蔵庫入れなければと、私は大切にそれを抱え電車に乗る。
電車の人混みは大丈夫だろうか気になったが、神様も味方をしてくれているのか、通行人にも乗車中の人にもぶつかられるようなことはなかった。
家に帰りブーケを冷やすとすぐ、私はスーツケースを開けて、中を確認した。
慎重な私は、昨夜確認したのにも関わらず今夜も確かめてしまう。
一応衣服は5日分、用意はしている。追い返されることも考えているが、あまり今は考えたくない。
だが、彼の家に泊めてもらえるかわからないので、一泊だけホテルを予約していた。
どうか追い返されませんように……
持ち物はすべて揃っていた。私はゆっくりとスーツケースのチャックを閉めて、ため息をついてすぐ、大きく息を吸い込んだ。
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