コットンキャンディ

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ぼんやりと彼のことを思っていると、飛行機に乗り込む時刻になった。 ショルダーバッグの一番上のポケットからチケットを取り出し、ブーケの入ったカゴを抱え搭乗口に向かう。 無事にそこを抜けると、いよいよ飛行機に乗り込んだが、カゴは前座席の下部に置くこととなり、少し不安になった。   どうか崩れませんように…… 朝も早くとても緊張していたが、花が気になり落ち着かない。 そのため一睡もしないままシンガポールへ着いてしまった。 日本との時差は一時間しかないシンガポールは、飛行機を降りても、ボケるなんてことはなかった。 私はまず、スーツケースを取りに行く前にカゴの中のブーケを確認した。 足を当てぬよう注意を払ったおかげで、崩れは見られない。 しかしホッとしたのは束の間で、周りから聞こえる声が日本語でないことに気づく。 少しも馴染みのない異国の地であると、私に知らせる。 それでも人の流れに乗り、日本語を話せるスタッフがいたため空港ではスムーズに出ることができた。 しかしいよいよここからが、本番である。 何度も地図の上は歩いたが、実際はまるで違う。 時刻はもう夕方に差し掛かる頃だが、まだきっと彼は仕事中だろう。 私は彼の会社へ向かうため、あらかじめ調べたバスに乗ることにした。 彼の会社は乗り継ぎなしで、行きやすかった。なんとか英語を和訳し、失敗せずに彼の会社へは着いた。 調べた通りの外観であるビルの前に来たときは感動を覚えた。 しかし中へ突撃するわけにもいかず、私は会社の出入り口から少しだけ離れた場所で彼を待っていた。   いつ来るだろう…… 緊張と、ほんの少しの期待が私を襲う。 しかし、一時間ほど待っても彼は現れない。 優奈さんに事前に彼の終業時刻は聞いていて、私が会社に着いたのは、それより15分ほど遅い時間だった。 もしかすると、帰ったのだろうか…… そんな不安がでてくるも、それでももう一時間だけ……と、彼を待っていた。
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