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彼はやっぱり優しい顔をしていて、私を見つめていた。
彼の瞳に見つめられることはとても幸せなこと。しかしやはり恥ずかしくて顔を俯かせようとする私の顎を、彼は手で触れ下から持ち上げた。
それからすぐに顔を近づけ、口づけを落とした。その温もりには彼の心が込められている気がして、短いものだったのに、身体が小さく震えた。
「……寒い?」
この部屋は暖かいので、そんなはずがない。それなのに私は首を縦に振って、彼の首に腕を巻きつけた。
彼から見つめられている今の恥ずかしさから抜け出したい気持ちも大きかったから……
しかし、彼は足の爪先だけを床につけしゃがみこんでいたので、椅子に座っている私が上から力を入れてしまったことで、バランスが崩れ床に倒れてしまった。
私も、彼の身体の上に乗ったまま倒れこんでしまう。
「ご、ごめんなさい……!」
私はすぐさま謝ったが彼は、「大丈夫」と言って、互いの身体が重なった体勢のまま、私を抱き締め包んだ。
彼に抱き締められたことで、私の胸は強く締め付けられる。
どんな状態でも、今の私は彼に包み込まれると幸せみたいだ。
「優君、背中……」
しかし、固い床を背にして痛くないのか気になったが、彼はまた「大丈夫だよ」と言い、私の顔を彼の顔の位置と同じところにくるように動かすと、優しいキスをする。
だが、それだけでなく私たちは口づけを何度も繰り返した。
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